カネ田一少年の事件簿「住宅ローン編4完」【カネー】

はいはいはいはいはい、元鉄道運転士のカネーです。

私事ですが、コロナウイルスに感染してしまいまして、7月後半から8月前半は非常につらい期間となっています。

少し症状が落ち着きましたのでブログを更新することにしました。

東京駅に電車通勤していたのですが、暑さで感染対策を油断したのが原因かもしれません。

私の場合ですが、明らかに普段の風邪とは違う症状でした。いつもの風邪は喉の入り口、口をあけると見える部分が痛くなるのですが、コロナの場合は喉の奥、口を開けてもみえない部分の痛みから始まりました。最初は夏風邪だと疑わなかったので病院では検査を行わず、いつもの風邪薬を処方してもらいました。風邪であれば3日位処方された薬を飲むと治るのですが、今回は全くよくなりませんでした。逆に咳がとまらなくなるという症状がでて発症から1週間でついに発熱。これはまずいと思い検査したところ陽性判定でした。体調が悪い期間が長期続くのも当然辛いのですが、子どもが濃厚接触者になるので保育園に預けられない、妻も仕事に行けない、自分の会社にも迷惑をかけるというトリプルパンチ以上のダメージがありました。コロナ陽性判定がでてから妻にはずっと敬語を使うくらい頭があがらず、食事の用意をしてもらえるだけで、妻のありがたさを感じております。

皆さまもどうか感染対策を油断せず、楽しい夏をお過ごし頂ければと思います。

 

また、本日8月6日の8時15分は地元の広島に原爆が投下された日です。私の祖母は被爆者で、私が小さい頃に原爆が落ちた広島市内の様子を話してくれたことが今でも記憶に残っています。朝目覚めると家の窓ガラスが全て割れて血だらけになっていた、死に物狂いでトラックに載せてもらって九州まで逃げたと。

戦争は絶対してはいけない、核は2度と使ってはいけない。

広島県広島市の産まれとしてこの場を借りて皆様に発信させて頂きます。

 

 

今回はカネ田一少年の事件簿「住宅ローン編4(完)」です。

よろしくお願い致します。

 

1はこちら

カネ田一少年の事件簿「住宅ローン編1」【カネー】



 

2はこちら

カネ田一少年の事件簿「住宅ローン編2」【カネー】



 

3はこちら

カネ田一少年の事件簿「住宅ローン編3」【カネー】



 


 

 

1

 

カネーの足取りは重たかった。柳田氏から受けたアドバイスをサイコパス社長に報告しなくてはならないからだ。

正直なところ、到底ダメだろうなと考えていた。

 

「ただいま戻りました。」

カネーは事務所の扉をあけながら言った。

「お疲れ様です。」

話しかけてきたのは事務の真帆だった。事務所には真美しかいないようだ。

 

「カネーさんどうしたんですか、浮かない顔をして」

「これからサイコパス社長に案件の相談があるんですけど、どう伝えたらいいかと考えてましてね」

「あんまりよい話ではなさそうですね。」

「そのとおりです。良い報告であればLINEで済ませちゃうんですけど、面と向かって話さないといけないというのはそういうことです」

「うわ、その相談している間、同じ空間にいたくないんで、コンビニにでも行っちゃいますね」

 

ドンドンドンと足音が聞こえてきた。

 

「お疲れ様」

相変わらずの不機嫌そうな声が聞こえてきた。

 

「お疲れ様です」

カネーは大きな声で返した。

 

「カネー、相談があるんだってな、手短に頼む」

「はい、榊原氏からの紹介の件です。」

「融資をしてくれる金融機関見つかったのか」

「いけそうな金融機関がありますが、1点問題がございます」

「言ってみろ」

「実は、賃貸借契約書を弊社でつくらなければなりません。」

「どういうことだ、別に問題ないだろう、作成すればいいじゃないか」

 

2

 

時はさかのぼり柳田氏の事務所でのことだ

「カネーさん、購入者が購入したい物件に住民票を置いている件ですが、1点方法があります、ただしこの方法はあまり強くは勧められる方法ではないです。知美さんは3年前から住民票を購入する物件に置いています。その3年前から現在までの賃貸借契約書が必要になります。」

 

「賃貸借契約は結んでないと思いますが…でもローンの金額は知美さんから陽介さんに支払っていたとは思います」

 

「そうです、その事実があるのであれば賃貸借契約を結んでいるようなものでしょう。通常は家を貸すときには賃貸借契約書で契約を結ぶと思います。今回は元親族だから口頭で結んでいた。でもそれだと金融機関には元親族だと疑われてしまいます。それでは困る。だったら、住み始めた日付からの賃貸借契約書が必要です。それを作成してください。」

 

「ということは日付をさかのぼって作成するということでしょうか。」

「そうなります、またローンの支払額を知美さんから陽介さんに支払っていたということですが、その金額ではダメです。なぜなら賃料に換算すると安すぎます。安すぎると銀行は当然ながら使用貸借を疑います。つまり他人ではなく関係者なのではないかと」

「つまり、日付をさかのぼることに加えて、賃料も相場をみて適正価格での賃貸借契約書が必要ということですか」

「そのとおりです。」

「それは…偽造にならないですか」

「…」

柳田は沈黙したあとにゆっくりこたえた。

「カネーさん、Sガ銀行のパンプキンの件はご存知ですね」

「はい、もちろん知っています」

「あれは何が問題だったと思いますか」

「それは、不動産会社と銀行が偽造に加担して融資をしてしまったことだと思います」

「そうですね、その結果多くの被害者がでました。適正な価格から利益を多く載せた上に、購入者の年収も偽造して無理やり融資を組ませましたね」

「同じ業界にいますが、恥ずかしいことだと思います。私は別で同じように投資の区分マンションを住宅ローンで購入してしまった人の資金回収の仕事もしていますが、被害者は本当にどうしようもない状態になっていますし、自己破産する方もいます。」

「それでは、カネーさん。今回の件とパンプキンの件は同じだと思いますか」

カネーは沈黙した。

「今回の件は知美さんを助ける為に動いているんですよね、決してカネーさんの会社の利益を多くとる為ではないですよね」

柳田は静かに話しているが、言葉に力があった。カネーはまるでこちらが営業されているかのような気持ちになった。

「分かりました、知美さんと会社にこの件は確認します。柳田さんリスクはありますか」

「もし、元親族だと金融機関が気づいた場合に、通常親族間売買というのは金利が高くなったり自己資金を多くいれることが求められます。でも今回の場合は現状親族ではないので親族間売買にはあたらないですが、なんらかのペナルティが発生する可能性はあります。それは知美さんに伝えた方がいいでしょう。しかし助けるなら現状これしかありませんよ。」

「ちなみに会社にペナルティはありますか」

「そうですね、今回使用する金融機関で御社がかかわる取引に融資をしてくれなくなる可能性があります」

カネーは目眩がした。

「分かりました、会社と知美さんに確認して再度お伺いします。引き続きよろしくお願いします。」

 

3

 

カネーはサイコパスに事の経緯を説明した。

「なるほどな。うちの会社が陽介さんと知美さんの売買の取引に係るのは問題がないだろう。もと親族だと我々が知っていたという証拠がないからな」

「そうですね」

「ただ、賃貸借契約書の偽造はダメだ。結んでなかった賃貸借契約書の日付を3年前で作成して、更に賃料も実際払っていなかった金額より多く作成するというのはバレた場合は金融機関から取引禁止だ。そのリスクは分かるだろ」

「はい、分かります。」

「それに、賃貸借契約書には宅建士の押印も必要だ。誰が宅建士の押印をするんだ。これが偽造だった場合に押印した宅建士の免許は停止になるかもしれないだろ。お前はまだ宅建を持っていないから分からないかもしれないが、宅建士にとっては凄いリスクだと思わないか。」

「はい、思います。」

そう、カネーは宅建の試験に3回連続で落ちている。いかにこの資格をとるのが大変かは身を持って知っている。

「そもそもが、この案件でうちの会社で得られる利益はたかが知れている。知美さんからもらえる仲介手数料、物件金額が2,000万円ほどだから3%として約60万円だ。60万円でとれるリスクじゃないだろう、榊原氏の顔もあるが無理してまで取り組む案件ではない」

カネーは考え込んでいた。確かに無理して取り組む案件ではないのは分かるし、会社としてリスクをとるべきではないのも分かる。

しかし、ここで諦めてしまうと知美はどうなってしまうのだろう。競売になって住む場所もなくなったあげくに借金が残る。その上でアパートに引っ越して家賃と借金を返していくという生活になってしまうのではないか。

カネーはサイコパスには別で方法を考えると話し、知美に会いに行くことにした。

 

4

 

ピンポーン、カネーは少し重たい気持ちで呼び鈴を鳴らした。

「はーい」

知美は元気よくでてきた。何かに期待しているような声だった。

「お忙しいところわざわざお越しくださってすみません。」

「いえ、今回はご相談にきました。」

カネーは事の経緯を話した。

「つまり、賃貸借契約書があれば銀行がお金を貸してくれるかもしれないということですね。」

「はい、その通りです。」

「でも、陽介とは賃貸借契約をかわしていないから、新たに作成しなければならない、日付をさかのぼってということですね」

「仰る通りです」

「なにかリスクはあるんでしょうか」

「そうですね、銀行に対して明るみになった場合には一括返済もしくは金利の利上げを求められる可能性があります。」

「一括返済になれば、家を売却すればいいんですよね。利上げになった場合でも売却することに問題はないんですよね」

「はい、売却することについては問題がないです」

 

「分かりました、そのリスクって今私が置かれてる状況に比べると大した問題ではないです。その方法でお願いしたいです。陽介にはこちらから話します」

確かにそうだなとカネーは思った。競売になって借金が残り破産してしまう可能性と考えると、購入後に家を売却しないといけなくなるかもしれないリスクは大した問題ではない。

「承知しました、1点問題がありまして賃貸借契約書の制作を弊社では行えません、これは会社判断なのですが取引停止などのリスクを会社が了承しませんでした」

「サイコパス社長のお気持ちは分かります、経営者の判断としては間違っていないと思います」

「はい、なので賃貸借契約書を作成してくれる不動産会社を別に探させて頂きます、ただしリスクがあることなのでそれなりの手数料を請求される可能性があります」

「どれくらいかかるかしら」

「これからあたるので何とも言えないですが、数十万ほどとられる可能性はあります」

「仕方ないですね、よろしくお願いします」

知美は改めてカネーに頭をさげた。

 

5

 

カネーは新宿の雑居ビルの中にある事務所にきていた。正直ここにはあまりきたくなかったのだが仕方ないなと思いながらドアをノックした。

事務所からは髭面のいかつい男がでてきた。

「おー、久しぶりだなぁ、サイコパスは元気か?」

「お久しぶりです!」

カネーは背筋が伸びた。

名は京政といった。カネーの知る限りではサイコパス社長と付き合いがあり何度か取引をしているということ。昔はそっちの人だったのではないかということだった。一度だけキャバクラに一緒にいったことがあるのだが、酒癖もあまりよくなくカネーの苦手なタイプであった。

「どうしたんだ、一人で」

「実はお願いがありまして」

カネーは事情を話した。

「サイコパスも偉くなったもんだな、賃貸借契約書を俺に作らせようってことか」

「はい、すみません…」

「いいが高いぞ。30万は貰うからな」

ドスの効いた声が事務所に響いた。

カネーは足元をみてきやがってと思ったが、こんな危ない橋を渡ってくれる会社を京政以外に知らなかった。

「分かりました、そちらでお願いします。ただ弊社はこちらについて関与していないことにして頂きたいです」

「うるせーな、分かってるよ。その代わり何か困ったことがあったらサイコパスに助けてもらうからな」

京政はニヤリと笑った。

「分かりました。サイコパスに伝えておきます。」

カネーは苦笑いをしながら事務所をあとにした。

 

6

 

カネーはサイコパスに報告をした。

「まあ、それならいいだろう。京政さんの会社が賃貸借契約書を作るのであればうちの会社には関係ない」

サイコパスは渋々だったがOKをだした。

「榊原氏にはこっちから報告をいれておく。今回ばかりは難しいと思ったが何とかなりそうでよかったじゃないか」

「はい、ありがとうございます。」

「オーナーへも報告しておくから、次回のボーナスに反映するといいな」

カネーは反映してくれなかったら辞めてやると心の中で思っていた。毎回毎回厳しい仕事を振ってきては、ボーナスになかなか反映してくれないのだ。

 

7

 

知美、陽介、若田弁護士、債権回収会社の担当、役所の担当、司法書士が知美が融資をうける銀行に集まっていた。カネーをいれると7人で決済が行われるのだ。司法書士が本人確認を済ませ柳田氏に振込の依頼をすると知美の口座に融資額が振り込まれた。

その融資額を債権回収会社と役所の口座に振り込み、差し押さえを解除と同時に物件の所有権は陽介から知美に移った。

「無事に決済が完了しました、知美さんの物件になりましたのでローンは残りますが金利も高くないですし無理せずご自分のペースで返していってください」

「ほんとにありがとうございました」

知美の瞳には涙が浮かんでいた。陽介も一緒に頭を下げていた。

 

あとがき

 

長くにわたりカネ田一少年の事件簿「住宅ローン編」を読んで頂きありがとうございました。「カネ田一シリーズ」はカネーが仲介会社在籍中に経験したことにフィクションを混ぜながら書かさせて頂いております。今回の住宅ローン編はカネーが仲介の取引をした中で1番心の中に残っている案件です。通常仲介の仕事ってお客様の家を探すお手伝いをするというイメージがあると思うのですが、もっと全然深くてお客様の人生に寄り添うという本当に大変だけどやりがいのある仕事でした。自分が失敗したらお客様の人生を変えてしまうというプレッシャーの中、多くの仲介マン達は戦っています。家の購入や売却の時に色んな仲介マン達と会う機会があると思いますが、自分の人生にしっかり寄り添ってくれる仲介マンを選んで納得のいく不動産取引を皆様ができますことを祈っております。また、私の経験も今後「カネ田一シリーズ」で記事にしていきたいと思いますのでその際はよろしくお願いします。この取引どうなの?とか重説の疑問点などもございましたら、ツイッターにてお気軽にDMをくださいませ。

カネー / Twitter

 

カネーが検討していたマンション

 

武蔵浦和SKY&GARDENを株式会社サイコパス入社1年目に検討していました。当時新築で8階の西向きの2LDK55㎡が4,000万円前半だったと記憶しています。当時の坪単価240万です。現在は坪300万前半で流通しています。

プラウドシティ武蔵浦和ステーションアリーナの盛り上がり方をみると、買っとけばよかったなーって思う時がたまにあります。

武蔵浦和は私が上京してきたときに住みたい街で検討していた場所なのですが、私にとって手が届く街ではありませんでした。将来的に子どもが独立すれば武蔵浦和のタワーマンション群を検討したいなと思っていますが武蔵浦和のタワーマンションの価格が全然下がりそうにないし、むしろどんどん上がっている状況です。さすがにこれ以上はあがらないと思いますが、武蔵浦和の人気の高さを物語っていると言えます。武蔵浦和検討の方はタワーマンションだけにとらわれず、近隣の中古マンションを含め、広く検討されることをおすすめします。

 

ご覧いただきありがとうございました。次回はマンションのレビューを書きたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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不動産ベンチャー企業で仲介業をしていた経験を活かせると思いスムラボに応募しました。 忖度はせず本音で物件のことを書こうと思います。 [寄稿] マンションコミュニティ:スムラボ派出所スレ

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