人口が減っているのに、なぜマンションは高くなるのか 鹿児島市の変容【マンションタビト】

「人口減少が続く地方都市で、マンション価格が上がっている」。

この命題だけを聞けば、多くの人は矛盾を感じるかもしれません。需要が減れば価格も下がる、という経済の基本原則に反するように映るからです。

しかし鹿児島市の不動産市場を丁寧に読み解くと、そこには複数の構造的な力が重なり合い、「人口減少」と「価格上昇」が矛盾なく共存するメカニズムが浮かびあがります。

その構造を、最新の統計データと現場の動きから検証してみます。

 

県全体と市中心部の「二重構造」


まず前提として押さえておくべきことは、「鹿児島県」と「鹿児島市中心部」は、地価の動向において全く異なる動きをしているということです。

国土交通省が2025年3月に公表した最新の公示地価によれば、鹿児島県全体の地価変動率は前年比マイナス0.46%と下落基調にあります(※1)。人口流出が続く中山間地域や離島では、土地の値下がりが続いていて、これは鹿児島県内だけではなく、全国の地方が抱える広域的なトレンドです。

ところが同じデータを鹿児島市に絞ると、ちょっと変わっていきます。鹿児島市全体の公示地価平均は前年比プラス0.97〜1.30%の上昇を記録しており、県全体の下落とは正反対の動きを示しています(※2)。さらにエリアを中心市街地に絞れば、この傾向はより鮮明です。

天文館エリアの中核地点である東千石町では、商業地価が116万円/㎡前後に達しており、市内最高値を記録。鹿児島中央駅圏の地価も24〜34万円/㎡のレンジで堅調に推移しており、とりわけ商業地・利便性の高い住宅地では上昇が続いています(※3)。

ここで重要なのは、この上昇が「エリア全体の底上げ」ではないという点です。天文館という商業の核と、鹿児島中央駅という交通の結節点という、極めて限られた2つのゾーンに需要と資金が集中する「極地化」現象が起きています。郊外の住宅地は依然として軟調であり、価格上昇の恩恵は限られた地域に強く偏在している。これが鹿児島市の地価の最大の特徴です。

 

人口減少と世帯増加の逆説


「人口が減っているのになぜマンションが売れるのか」という問いへの直接の答えは、「人口」と「世帯数」が必ずしも同じ方向に動かない、という答えになります。

2025年時点の鹿児島市の人口は住民基本台帳ベースで約59万人前後で推移しており、ピーク時から数万人規模の減少が続いています。しかし注目すべきは世帯構造の変化です。2020年の国勢調査によれば、鹿児島県全体の単独世帯は全一般世帯の38.9%に達しており(※4)、その割合は増加の一途をたどっています。

65歳以上の一人暮らし高齢者世帯は2015年から2020年の5年間で8.6%増加し、2040年には県内でさらに約1割増えると予測されています(※5)。

この「世帯の細分化」が住宅需要を下支えするメカニズムです。かつて4人で住んでいた家族が離散し、それぞれが単身世帯を形成すれば、人口は変わらなくても住宅の「器」としての需要は4倍になります。高齢化と晩婚化・未婚化の進行は、この現象を加速させていると言えます。

同時に、2000年から2020年の20年間で鹿児島市の高齢化率は12.6ポイント上昇しています。高齢者は健康上の理由や利便性の観点から、郊外の広い戸建てよりも、医療機関・商業施設・公共交通が集積した都市中心部の小規模マンションを選好する傾向があります。これが「郊外の戸建てから中心部のマンションへ」という世帯移動のマクロな流れを生み出しているのです。人口が減っても、中心部への需要は構造的に維持されることになります。

 

給側の変容 ― 大手参入と投資需要

需要サイドの変化に呼応するように、供給側でも変化が起きています。

近年の鹿児島市における分譲マンションの年間供給戸数は、かつての400〜500戸台から拡大基調にあります。また供給主体にも変化が生まれていて、これまでの地場企業中心の市場に、全国規模のデベロッパーが参入してきました。大手や県外デベロッパーが荒田・照国・堀江町などの中心部エリアに次々と参入しているのは、収益を見込める需要が実際に存在するからでしょう。

また、近年はJR九州や日本郵政が所有していた大規模な土地に大規模なマンションが次々と建設されています。MJR鹿児島中央駅前ザ・ガーデン156戸、MJR鹿児島中央駅前ザ・レジデンス260戸、MJRザ・ガーデン上荒田220戸、ブランシエラ南洲門前通り159戸など、鹿児島では大規模なマンションが相次いでいます。

MJR鹿児島中央駅前ザ・レジデンス公式サイトより


 

購入層の構成も多様化しています。従来からの実需層(ファミリーや若い共働き世帯)に加え、近年は三つの層が際立っています。

第一は「アクティブシニア」だ。郊外の戸建てを売却し、その資金を元手に中心部の利便性の高いマンションに買い替える高齢者が増加。老後の安心と利便性を同時に手に入れる、いわば「終の棲家」としての購入です。

第二は「Uターン・移住組」です。首都圏や福岡での仕事を経て地元に戻る働き盛りの世代が、職住近接を求めて中心部マンションを選択するケースが増えている。テレワークの普及が地方移住を後押しする全国的なトレンドと重なっています。

第三は「資産運用・資産防衛目的」の購入です。転勤を伴う公務員や教職員が将来の賃貸運用を視野に入れてマンションを購入する動きや、インフレ局面における実物資産への資金シフトが、中心部マンションの需要を厚くしています。

鹿児島では特に、公務員夫婦が最強のパワーカップルという事情があります。そして、その公務員夫婦は鹿児島市役所勤務を除けば、離島を含めての県内転勤が頻繁です。生活の拠点として、退職後の利便性として、鹿児島市中心部を選ぶ傾向があります。

価格上昇の構造的背景

需要と供給の変化に加え、コスト側からの圧力も価格上昇を後押ししています。

2024年以降、建設資材費と人件費の高騰は全国的な問題となっており、九州・沖縄エリアも例外ではありません。不動産経済研究所のデータでは、2024年の全国マンション平均価格は前年比2.9%上昇の6,082万円に達し、㎡単価も13年連続で上昇しています(※6)。原価が上がれば販売価格も上がります。これは市場原理の必然であり、地方といえど例外ではありません。

さらに大手デベロッパーの参入は、市場の「品質基準」を引き上げる効果も持つ。共用施設の充実、設備グレードの向上、ブランド力による付加価値が加わることで、地場企業の物件も価格の基準線を上げざるを得なくなります。競争が価格を下げるのではなく、品質向上を通じて価格帯全体を押し上げるという、地方都市でも大都市と同じ現象が起きているのです。

縮小均衡」の中の都市の選択

以上の分析をまとめると、鹿児島市のマンション市場が高値を維持する構造は、大きく三つの要因が重なった結果と言えます。

一つ目は「世帯の細分化と高齢化」による実需の底堅さ。

二つ目は「中心部への需要集中(極地化)」という空間的な需要の偏在。

三つ目は「コスト高と大手参入による供給価格の底上げ」だ。

ただし、この上昇には限界もあるはずです。鹿児島市の購買力は首都圏や福岡と異なり、賃金水準の上昇が価格上昇に追いつかなければ、いずれ需要は頭打ちになる可能性があります。

「人口減少」という大きな流れの中で、都市は縮小しながらも「密度を高めて生き残る」戦略を取らざるを得ない。それはそこに住む人も同じです。鹿児島市中心部のマンション市場は、今後この市場がどこまで持続可能かは、人口動態・金利・建設コスト・地域所得という要素で出来上がって売ると言えます。

 

【主要データ出所】

※1 国土交通省「令和7年地価公示」(2025年3月公表)
※2 tochidai.info「鹿児島市の土地価格相場・公示地価」(2025年データ)
※3 tochi-value.com「鹿児島市の地価公示価格・路線価」(2025年データ)
※4 鹿児島県「令和2年国勢調査結果(世帯の構成)」
※5 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」(2019年)
※6 不動産経済研究所「全国 新築分譲マンション市場動向 2024年」

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福岡市出身。2011年に最初のマンションを購入して以来、転勤のたびにマンションを買い替え。出身地の福岡に戻ってからは、福岡市西部エリア(中央区から早良区・西区、糸島市)中心にマンションを見て回っています。

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