プロローグ
2026年7月14日『ここぞ』という時のみ現れる大丸京都店の暖簾。
創業享保二年。
三百年以上、この街とともに歩んできた老舗百貨店も、祇園祭を迎える。
京都では、祭りは特別なイベントではない。
街の日常そのものだ。
2026年7月16日
宵山。
提灯に照らされた山鉾町には、国内外から集まった人々が溢れていた。
祭りの熱気は一年で最も高まり、京都の都心は非日常へと姿を変えていく。
しかし、その喧騒のすぐ隣では、建設クレーンが静かに空へ伸びていた。

宵山の新町通「ザ リソシエ 四条新町」前には放下鉾
2026年7月17日 9:00
祇園祭・前祭の長刀鉾が、熱狂とともに四条烏丸を出発した──。

「四条烏丸」交差点
午前9時だというのに、京都はすでにうだるような暑さ。照りつける日差しに加え、満員電車のような人波で不快指数は120%を超えていた。
それでも周囲を見渡せば、世界中から集まった旅行者たちが汗を拭いながら山鉾を見上げている。
Apple京都の前で、ふとこんな言葉が頭をよぎった。
「なぜ、世界は京都を目指すのか。」
山鉾はやがて烏丸御池へ向かう。私は祭りの熱狂を追いながら、その先にある街並みに目を向けていた。

「烏丸御池」交差点
実は、烏丸御池周辺の『御所南小学校区エリア』では、大手デベロッパーによるマンション計画が相次いでいる。
御池通沿いに計画される野村不動産のマンション計画地。その目の前を山鉾がゆっくりと通り過ぎていく。
この光景を見ていると、デベロッパーが売ろうとしているのは住まいだけではない。
祇園祭が日常にある京都という時間そのものなのではないか。
そんなことを考えた。

御池通沿い野村不動産マンション計画地

野村不動産マンション計画地前を山鉾が通り過ぎる
祭りは毎年訪れる。しかし、その舞台となる街は少しずつ姿を変えていく。
今回は、祇園祭の熱気に包まれた京都の都心で、御所南エリアを中心に進むマンションラッシュを歩いてみたい。
室町通マンションラッシュは終わっていなかった
以前、私は「室町通マンションラッシュ」と題して、御所南エリアで相次ぐマンション開発を紹介した。山鉾巡行を終えた曳き手たちが室町通で一息つく。そのすぐ横では、新しい京都の街づくりが進んでいた。

御池通より北の室町通にはマンションラッシュが
三菱地所レジデンス11階建(高さ31m)40戸・延床面積4,650㎡、長谷工不動産9階建(高さ29.74m)26戸・延床面積2,411㎡によるマンション計画地の北側の更地のバリケードに関電不動産開発「シエリア京都御池室町」の建築計画が設置されていた。

手前のバリケードが関電不動産開発「シエリア京都御池室町」
計画概要は地上10階建、高さ30.79m、総戸数18戸、延床面積約2,196㎡。
18戸という小規模マンションだが、共用部を除く専有面積は1戸あたり85〜98㎡程度になると推測され、都心部ではゆとりある住戸構成となりそうだ。高さを生かした富裕層向けのマンションになる可能性もある。

関電不動産開発「シエリア京都御池室町」建築計画の概要
山鉾巡行の熱気が残る御池通の北側では、大手デベロッパーによるマンション供給が続いている。歴史ある町並みの中に、新しい住まいが静かに増えていく。

「御池室町」交差点
祭りの日だけを切り取れば、そこに見えるのは熱狂だけかもしれない。しかし、視線を少し上げると、クレーンが京都の新しい風景をつくり始めていた。

分譲マンションが3棟計画された室町通
関電不動産開発は御所南で攻勢を強める
室町通で「シエリア京都御池室町」の建築計画を確認した後、以前から気になっていた油小路通沿いの更地を思い出し、現地へ向かった。すると、「シエリア京都御池室町」は関電不動産開発による数ある計画の一つに過ぎないことが分かった。

油小路通側
油小路通では、地上10階建・42戸・延床面積約3,762㎡の新たなマンション計画が進んでいる。専有面積は試算すると1戸あたり62㎡〜71 ㎡。今回、スムラボでは初めて紹介する計画だ。実は小川通にも接道している細長い敷地になる。

関電不動産開発・下古城町・押綾小路町・10階建・42戸・延べ面積3762.57㎡
さらに丸太町通寄りの室町通でも、地上7階建・34戸・延床面積約2,710㎡のマンション計画を確認した。
専有面積は試算すると1戸あたり55㎡〜63 ㎡

関電不動産開発・道場町・7階建・34戸・延べ面積2710.26㎡

丸太町通から室町通を南へ
室町通、油小路通、そして室町通の北。徒歩で巡ることのできる範囲だけでも、関電不動産開発による3つの計画が進行している。そして、そのすべてが烏丸通より西側の御所南小学校区に位置していた。
偶然とは思えない配置だ。関電不動産開発が狙っているのは「御所南」というエリアではなく、「御所南小学校区」というブランドなのかもしれない。京都市中心部では学区を重視して住まいを探す層も少なくなく、徒歩圏に計画が集中している背景には、こうした立地価値への評価もうかがえる。
一つひとつは決して大規模ではない。しかし、実際に街を歩いてみると印象は大きく変わる。個々の計画は「点」だが、街全体で見ると「面」として供給が広がっている。
京都都心では、大規模再開発ではなく、中規模マンションが積み重なることで街が静かに更新されている。
関電不動産開発が3件とも御所南小学校区に計画している事実は、この学区が持つブランド力を物語っているように思えた。

御所南小学校 外観
新町通でも動き出していた
関電不動産開発の計画を確認した後、以前から気になっていた新町通沿いの砂利敷きのコインパーキングへ向かった。以前から「ここもマンション用地になるのではないか」と感じていた場所だ。

新町通沿い東側に砂利パーキング
現地に到着すると、その予感は現実となっていた。
建築主は阪急阪神不動産。
計画概要は地上5階建、高さ16.4m、総戸数14戸、延床面積約1,304㎡。延床面積から考えると、専有面積は1戸あたり65~75㎡前後が中心となる可能性があり、ファミリー層を意識した商品企画が想像される。

阪急阪神不動産・弁財天町・5階建・14戸。延べ面積1304.91㎡
興味深いのは立地だ。
烏丸通や御池通といった幹線道路から内へ入った新町通沿いに位置し、周辺には落ち着いた住宅地が広がる。周辺は高さ制限15m(5階建)を基本とする街並みだが、建築計画概要の最高高さは16.4mとなっている。塔屋などを含めた最高高さである可能性もある。
こうして歩いていると、御所南小学校区では関電不動産開発だけでなく、阪急阪神不動産も新たな供給を進めていることが見えてきた。
個別に見れば14戸の小規模計画に過ぎない。しかし、関電不動産開発、阪急阪神不動産と歩いてきただけでも、複数の大手デベロッパーによる計画が確認できた。
御所南小学校区全体で供給が広がる
さらに御池通沿いでは、野村不動産による地上10階建・24戸のマンション計画が進行中。その南側でも、三井不動産レジデンシャルによる地上11階建・30戸の計画が控えている。以前紹介した大阪ガス都市開発による二条城東計画も含め、このエリアでは複数の計画が同時に動いている。

野村不動産・長浜町・10階建・24戸/店舗1戸・延床3895.64㎡

三井不動産レジデンシャル・長浜町・11階建・30戸・延床2935.36㎡

大阪ガス都市開発・矢幡町・5階建・42戸・延床3999.93㎡
そして地図上に落とし込んでみると、一つのことが見えてくる。
西側では新たな供給が始まり、東側では販売が進む。
御所南小学校区では、街の更新が異なるフェーズで進んでいることが見えてきた。
関電不動産開発、阪急阪神不動産、大阪ガス都市開発、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、ダイマルヤ――。
一社の大規模再開発ではない。複数のデベロッパーが、それぞれの場所で供給を積み重ねることで、御所南小学校区の街は静かに更新され続けている。
祇園祭で世界中の人々が京都を訪れるその一方で、京都の都心では「ここに住みたい」と考える人々へ向けた住まいづくりが静かに進んでいた。御所南小学校区は今もなお、京都都心を代表するマンション供給エリアであり続けている。
祇園祭の日、世界中の旅行者が京都を目指していた。
その熱狂のすぐ隣では、大手デベロッパーが「京都で暮らす」という価値に投資を続けている。
彼らが売ろうとしているのは、マンションという建物ではない。
祇園祭があり、京都御苑があり、歴史ある街並みが続く。
そんな京都の日常そのものに、人は価値を見いだしているのかもしれない。

圧巻のクライマックス「神幸祭」
おわり
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